2007年11月29日

近代農業の功罪A

メソポタミア文明で、
灌漑(かんがい)用水が確立したことは前回記述しましたが、
中世ヨーロッパ農業では、
“三圃式”あるいは“四圃式”という
農耕方式が確立されました。

この農法は、
耕区を3つか4つに分割して、
 ・ 家畜(牛、ヤギ、うさぎ、鶏など)を放牧し、
   雑草を食べさせ家畜ふん堆肥で地力を増す
 ・ 農作物を栽培する
 ・ 休耕地として寝かせる

というように、
家畜の有機堆肥を利用して土地の地力を増進させながら
毎年順繰りに分割地を移動していく農耕方式で、
私も一時期は、この農法に憧れていたのですが、
最近は、
「動物性の堆肥は使わない方がよい」
という考え方に染まりつつあり、
これについては、また後日記述したいと思います。

071128coffee1.JPG

土を掘り起こす道具として、
最初は木の枝だったのでしょうが、
やがて、より掘りやすいように
木の先端に鉄の刃を付けて
鋤(すき)や鍬(くわ)などに改良され、
鎌(かま)や千歯こぎ、手箕(てみ)、
ワラウチなどの農具も登場するようになるのですが、
江戸時代以降の農業では、
 ・ 堆厩肥
 ・ 役畜
 ・ 鋤(すき)、鍬(くわ)などの農具

を中心とした、
小農による土地の粗放的使用と
なにより重労働が農業の代名詞で、
百姓の「百」は、「百の仕事」ともいわれる由縁なのです。

071128coffee2.JPG

産業革命後に定着した近代的量産化システムの中で、
資本主義とは、
「投下資本あたりの利得(資本生産性)を最大にするように、
 産業活動をシフトさせる経済体制」

を意味していますから、
資本主義の観点から見た農業の近代化とは、
「世界的な市場を持つ作物
 (米、小麦、とうもろこし、大豆など)に対して、
 土地および労働(農薬や肥料、農機具も含む)あたりの
 収量を、技術的な改良によって増大させること」

で、
 ・ コンバインやトラクターなどの機械化
 ・ 化学製品の利用
 ・ 水利システム開発
 ・ 品種改良

を背景とする高度耕作法に急速に変化していったわけです。

工業化の産業革命に対して、
化学肥料、農薬、機械の使用による近代農業の導入は、
さしずめ
「農業革命(=食と農の革命)」
ということになるのでしょうが、
投下資本あたりの利得(資本生産性)を高めるはずの
近代農業でも、
すべての面で生産性向上をもたらした訳ではなく、
 ・ 土壌の劣悪化による収穫量の低下
 ・ 作物の品質低下
 ・ 連作障害
 ・ 病害虫の異常発生
 ・ 生産者への病的影響
 ・ 環境破壊

などの弊害も出ているのです。

071128coffee3.JPG

コーヒーの木は基本的には肥料は要らず、
放任で7〜10mまで大きくなる高木ですが、
コーヒー園の多くは、実を収穫しやすいように、
手を伸ばして届く高さ(約2m)で
幹の先端部分をピンチしています。

そのためコーヒーの木は、ピンチさえすれば
高さは自由に設定出来るのです。

一般的には、高さが約2mにされていますが、
西原町の玉那覇三郎さんのコーヒー園のように、
防風対策として、
高さを約1.5mにしているところもあります。

海外では、コーヒーだけを同じ場所で
数百年も繰り返して植えていることで、
特定の土壌成分だけが吸収されてしまい、
次第に生育不良となっていく
“連作(れんさく)障害”という現象に陥り、
ブラジル、コロンビア、ジャマイカ、インドネシア、
エチオピアなどコーヒーの名生産地では、
私が調べた範囲内では、
相当数の農場が化学肥料と農薬を使用していました。

ハワイのコナでも、
“有機栽培”という認識をしながら、
コーヒーの木の周りに除草剤を撒く農家が多いのです。

コーヒー栽培で使われている農薬は、
 ・ 除草剤
 ・ 化学肥料
 ・ 殺虫剤
 ・ 殺鼠剤

で、
大規模な空中散布が行われている国や
無料で農薬を配布している国もあり、
農薬が安易に使用されているのが現実なのです。

071128coffee4.JPG

こうして考えると、
世界最高のコーヒーを作るには、
農薬は絶対に使わないのは当然としても、
単純な放任による自然栽培ではなく、
コーヒーの立場に立って考えないといけないと思うのです。

「食の大切さ・安全を学び、
  自然の恵みに感謝しながら収穫する」

のは、基本中の基本の当然のこととして、
「人間も植物も同じ」
ととらえ、
「植物に対する思いやり」
を重視する“心の農業”
極めてゆく必要があるのではないか、
と考えています。

近代コーヒー栽培の要求する樹形や収量にこだわらず、
「コーヒーの木にとって、
 最良の姿は本当はどういうものなのかexclamation&question

という原点に立ち返ると、
いつかエチオピアやトルコに行って、
コーヒーの原種が自然生えしているところを
見てみたいと思うのです。

071128自宅のハイビスカス.JPG
台風23号台風は熱帯低気圧になり、
沖縄方面からそれましたので、ひと安心です。

posted by COFFEE CHERRY at 01:08| 沖縄 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | コーヒーの品質を高めるための考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月27日

近代農業の功罪@

最近の原油高によるガソリンや灯油値上げと共に、
近年では食料品の値上げも進んでいます。

日本人の食卓に欠かせない豆腐や納豆、味噌、
醤油などの原料である大豆の高騰や
パンや麺類の原料の小麦の高騰など、
庶民の生活に影響が出始めています。

世界の主要農産物の高騰の背景として、
温暖化による気象の変化が
生産地の収穫量に影響を及ぼしているとか、
バイオ燃料ブームによる転作から
穀物供給不足になっていることが挙げられています。

世界のバイオ燃料生産量の9割が
トウモロコシやサトウキビを原料とする
バイオエタノールですが、
 「バイオエタノールを1.1リッター作るために、
  原油を1リッター使う」

というバカげた話は、
当コーヒーブログかバナナブログで、
いずれ書きたいと思いますが、
主要農産物の高騰の要因の1つに挙げられている
「オーストラリアの干ばつ」
から、
メソポタミア文明の農業を思い起しました。


メソポタミアとは、古代のギリシャ語で
「2つの大河にはさまれた土地」
という意味で、
現在のイラクにあたるチグリス川と
ユーフラテス川の間の地域で
今から5,500年も前の
紀元前3,500〜3,000年ごろに起こった文明で、
エジプト文明と共に古代オリエント文明といわれ、
ヨーロッパ文明のもとになった、
というのは学校で習いましたが、
後にアラビアン・ナイトの舞台となったこの地域には、
物語に登場する不思議な魔法に代表される
高度な科学があったことでも知られています。

当時の日本は縄文時代後期(=中石器時代)で、
貝塚や敷石住居の頃ですから、
物々交換が始まったあたりで、
農業ではオオムギ、ヒエ、キビ、アワ、
ソバなどの雑穀類の栽培や
アズキ、大豆などの混作に加えて
熱帯ジャポニカの焼畑稲作も行われていたようですが、
同時期のメソポタミアでは、
すでにシュメール人が創り出した楔形(くさびがた)文字が
使われていました。

メソポタミアのペルシア湾に注ぐ河口付近では、
沼地や湿地は一面の葦におおわれていたようですが、
それ以外のところは荒涼とした原野で、
またほとんど雨が降らないので、
乾燥した大地に多くの人が住むために、
「灌漑(かんがい)用の運河やため池を作る」
という画期的な農業を始めたのも、
メソポタミア文明の特長の1つでもあるのですが、
人口の増加に伴なう灌漑(かんがい)農業の発展が、
いみじくも国家滅亡への第1歩となったようなのです。

河川から水を引く灌漑(かんがい)によって、
一時的に農産物生産は増大したのですが、
周辺の地下水が上昇し、
その地下水が40度を超す夏の高温によって蒸発し、
地下水に含まれていた大量の塩分が地表に残り、
やがて農地は耕作不能なほどに
荒廃してしまったようなのです。

メソポタミアでは、
紀元前3,500年頃まではほぼ同量の小麦と大麦が
生産されていたようですが、
灌漑(かんがい)農業の発展に伴ない、
塩分に弱い小麦の生産は減少し続け、
紀元前1,700年頃になると、
南部地方では、ついに小麦の生産を
放棄せざるをえなくなっているのです。

さらに穀物全体でも、紀元前2,400年を基準とすると、
700年後の紀元前1,700年には、
収穫量が65%も低下しているのです。

そのために、余剰農産物を生産することが出来ず、
後からその地を征服した王朝も、
支配する軍隊や官僚を駐留させることが出来ず、
メソポタミアの中心は北部へと移ってゆき、
同時に農産物の収量が落ちている南部地方からは人が去り、
やがて中東の辺境の地となり、
それ以後、南部メソポタミアが
世界から脚光を浴びるのは19世紀になるわけです。


古代文明が栄華を極めながら、
現代においてはその面影すら感じられないメソポタミアや
インド・パキスタンのインダス文明では、
共通した教訓があります。

それは、
「短期的な収穫量増大を目的とした
    人工的農業の発生とその崩壊」

です。

すなわち、メソポタミアや
インダス文明の識者が発案した人工的農業は、
画期的ではあるのですが、
「その土地の気候や環境に順応した
 長期にわたって持続可能な農業は
 実践できなかった」

ことを意味しているのです。

世界史では、
古代から中世にかけて永い繁栄を続けることが出来た国では、
その多くが農業大国で、その代表がローマ帝国です。

当時のローマに住む人々の多くは菜食主義でした。

16世紀にエスパニア(スペイン)の
フランシスコ・ピサロによって
滅亡させられたインカ帝国もまた、
南米最大の農業大国でしたが、
これらの国家が永い間大国として君臨できたのは、
環境に順応した持続可能な農業技術が
確立できたからなのです。

強い軍隊や有能な指揮官、優れた国家の指導者や
繁栄した国家の民衆が毎日食べる農産物は、
スローフード(地産地消)であったに違いないからです。

だとすれば、農業の発展は、
安定した国家を形成する上で
欠かすことが出来ない要素であって、
カロリーベースの自給率が39%にまで落ち込んでいる
日本の現象は「異常な事態」ということが
お判り戴けることと思うのです。

posted by COFFEE CHERRY at 22:28| 沖縄 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | コーヒーの品質を高めるための考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月17日

沖縄の辺野喜(べのき)コーヒー

国頭村の58号線を北上し、
「道の駅ゆいゆい国頭」を過ぎて、
2つ目のトンネルを通過したところが、
現在私が移転を計画している与那(よな)という集落ですが、
ここからさらに約4kmほど北上しすると
「辺野喜(べのき)」
という隣の集落があります。



ここは、沖縄本島最北端の辺戸(へど)岬から
約7kmほど南下しただけの、
共同売店があるだけの過疎の集落ですが、
ここで4本のコーヒーを栽培している農家があるらしく、
先日、新与那トンネルの手前の伊地(いじ)共同売店に
立ち寄った時に、
コーヒー通の店主が、
辺野喜(べのき)産のコーヒーについて
 ・ 収穫量は少ない
 ・ 豆の大きさがマチマチ
 ・ 個性の強い味で他のコーヒー豆と
   ブレンドしないと飲めない

と言われて、
店主が焙煎した辺野喜(べのき)産のコーヒー豆を
見せて戴きました。

急なことだったので、
デジカメを車内に置き忘れていたために
撮影できませんでしたが、
納豆の極小粒程度の、
ふつうのコーヒー焙煎前の半分程度の大きさしかなく、
あちこちの沖縄コーヒーを見てきた私でも、
初めて見る小粒でしたから、
今まで見聞きした品種と違うのかもしれませんし、
パイナップルを栽培するような
強酸性土壌で栽培されているのかもしれません。

店主はアラビカ種と断定されていましたが、
アラビカ種特有のスパッと切るような半円形より、
少し丸みを帯びていたようにも思うのですが、
ぜひ次回は、焙煎豆の撮影と、
辺野喜(べのき)で栽培されているコーヒーの木を
見てみたいと思っています。

沖縄では、コーヒーの木はバナナと同様に庭に植えても、
強風にさえ当たらなければ、放任でも成育しますから、
まだまだ県内のあちこちで
コーヒーを栽培している方がいるはずですし、
 ・ コーヒーの苗木や種の入手方法
 ・ コーヒーを栽培する動機
 ・ 加工方法
 ・ 味

など、
それぞれにストーリー性や試行錯誤の苦労話に富み、
興味深いのです。

071117.JPG
こういった新種は観賞用というだけで防風林にはなりません
posted by COFFEE CHERRY at 11:12| 沖縄 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | 沖縄のコーヒー栽培 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月16日

アオカナヘビ(青金蛇)というトカゲ

南風原町の兼城(かねぐすく)に在住の具志堅様は、
名護市の旧宅でコーヒーの成木を約40本栽培していて、
ご自身で網カゴ焙煎もしています。
(市販はしていません)

先日、具志堅様から、
落下した実から発芽したコーヒーの苗木を
数十本分けて頂いたのですが、
このときに、どうやらアオカナヘビ(青金蛇)が苗木にまぎれて
私の車に乗車してしまったようです。

アオカナヘビ1.JPG
   コーヒー苗木を載せた後部座席で発見!

アオカナヘビ(青金蛇)は、
沖縄の方言では「ジューミー」と言って、
尻尾の部分が長いのでヘビという名が付いているだけで、
沖縄では特別珍しいトカゲではなく、
子供が捕まえたりするごく普通にどこにでもいる
昼行性のトカゲです。


アオカナヘビ(青金蛇)は、
「爬虫類・有鱗目・トカゲ亜目・カナヘビ科・クサカナヘビ属」
に分類される南西諸島に生息する日本固有種のトカゲで、
体長20〜30cmのうち、7割くらいが尾で
この尾を草や枝等に巻きつけることにより
低木等に登ることも出来ますし、
敵に尾を捕まれると、
自分で尾を切って再生させることも出来ます。

アオカナヘビ2.JPG
   細長いので、縦長で掲載しました

見た目は、明らかにトカゲなのに
“ヘビ”という名前が付いているのは、
単純に「尾が長く細長いから」という理由だけでしょう。

「カナヘビ(金蛇)」というのは、
本土のカナヘビが金色(といより褐色)をしているらしく、
沖縄のが青い(というより緑)色をしているから
「青カナヘビ」という名前のようです。

彼は、主に昼間動き回って、
小さな昆虫や蛾の幼虫、
クモなどを捕らえて食べる肉食性ですから、
キノボリトカゲ同様にミニ恐竜のようなものでしょうが、
コーヒーの栽培からすると、
蛾や、その幼虫を食べてくれるので、
“益虫”ということになります。


彼は、鮮やかな緑色で、一見目立ちそうですが、
茂みの中に潜んでいると保護色ともなるようです。

アオカナヘビ3.JPG
尾の付け根が白っぽいのは、擬態し始めたからでしょうか?

沖縄でも、宮古諸島にはミヤコカナヘビ、
八重山諸島にはサキシマカナヘビという
彼の近縁種がそれぞれ生息しているようですが、
沖縄では珍しいトカゲではないので、
絶滅のおそれのある「環境省レッドデータブック」には
掲載されていないようです。
posted by COFFEE CHERRY at 11:01| 沖縄 ☀| Comment(3) | TrackBack(1) | コーヒーの害虫・益虫・タダの虫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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