2008年10月02日

コーヒーの種子のメカニズムについて考える

「眠れる森の美女」
は、ヨーロッパの古い民話で
グリム童話より前のペローの童話集を基に
チャイコフスキーがバレエ音楽を作曲したり、
ディズニーのアニメ映画も作られているのですが、
あらすじは、オーロラ姫の祝宴に呼ばれなかった魔女が
「オーロラ姫の指に糸車の針が刺さって死ぬ」
という呪いをかけ、妖精が
「針が刺さっても死なずに百年の間眠るだけ、
  恋人のkissで呪いを破る」

という呪いに変え、その後紆余屈折の末、
フィリップ王子がオーロラ姫にkissをしたことで覚醒し
2人はその日のうちに結婚、幸せな生活を送る、
という誰もが知っているHappy EndのStoryです。

コーヒーの種.JPG
 赤く熟したコーヒーの実を収穫し、
 実をつぶして水槽に入れて、
 沈んだ種を天日乾燥させたもので、
 パーチメント付きの状態ですが
 一般的にはこの状態で種植えをします。
 年初にコーヒー山をお借り出来たことで
 今年は鉢やポットに入っている苗木の搬入や移植、
 自宅の引越しなどでゴタゴタすると思い
 種植えを来春に延期しようと持っている種で、
 私は収穫直後に種のまわりにベトベトする“ぬめり”が
 付いている状態で種植えを行っています。
 品種はムンド・ノーボ種で画像はほんの一部です。


「コーヒーの木を幸せに生きてもらう」
つまり
 「コーヒーの木のHappy Lifeを重視することが
            美味しい実の恵みを受けるはず」

というのが私の基本理念で、
「そのためにはどう栽培したら
  コーヒーの木がHappy Lifeになるのか」

を考えながら栽培努力を重ねているのですが、
今日は「種子」について考えてみましょう。

自生え苗1.JPG
 コーヒーの成木の下には、自生えした苗木がたくさんあり、
 それをポットに移し替えたものですが、
 人を介さない自生え苗は元気でたくましいです。


植物の種子が“美女”かどうかはともかく「眠れる」時があるのです。

植物の種子は、
 ・ 母体の植物から落下する
 ・ 風で飛ばされて母体と離れた所に落下する
 ・ 鳥などに果実を食べられたことで
   母体と離れた所に落下する
 ・ 人間が介在する

など、
様々な方法で種子が地面に散布されるのですが、
このときに種子の中の胚は
成長を一時休止した状態になるのです。

自生え苗2.JPG
 右側は自生えした幼い苗木です。
 左側の大きい方の黒ポットもコーヒーで
 コーヒー山への搬送を待っています。


種子が発芽するために必要不可欠な三要素とは
 ・ 水
 ・ 酸素
 ・ 適当な温度

と、小学校で習いましたが、
これらの環境条件が整うと、
種子の胚が成長を再開して種皮を破り、
芽生えへと成長を始め、
これが「種子の発芽」なのです。

自生え苗3.JPG
 見た目はデリケートですが、
 なかなか丈夫なのです。


それでも、この三要素が与えられてもすぐには発芽せずに、
さらに一定の条件が満たされるのを待ってから
発芽する種子もあって、
このような現象を「種子の休眠」というのです。

コーヒーの発芽1002-1.JPG
 コーヒーの発芽では殻を付けてモヤシのように出てきます。

種子が休眠から覚めるための条件は、
植物の種類によって様々ですが、
多くの樹木の種子は0〜5℃程度の低温にさらされると、
その後の温かい温度でよく発芽するようになり、
発芽可能な温度域が広がります。

コーヒーの発芽1002−2.JPG
 少しピンボケ画像で済みません。
 カツラのようにかぶっている殻は
 双葉が大きく開こうとするときに
 自然にポロリと落ちます。


これは自然界で秋に種子が地表に落ちて
その種子の上に冬に雪が積もることで種子が凍り、
そして春に雪が融け気温が上昇してくるにつれて
眠っていた種子が発芽する、という現象を
人工的に行なう低温処理方法で、
冷蔵庫の野菜室に種子を入れることで種子に“冬”を感じさせ
そこから出して常温にさらすことで、種子に
「もう春になったから発芽してもいいよ」
と暗示させる、
ある意味催眠療法的な方法として
多くの野菜や果樹などの発芽で応用されています。

コーヒーの発芽1002−3.JPG
 まだ発芽したてのモヤシ状態で
 土から出してみました。


それでも、
「冷蔵庫の野菜室に入れておく時間」
は、厳密には植物でまちまちで
例えば「松」では、
 ・ アカマツ 3週間程度
 ・ ハイマツ 4ヶ月程度
 ・ ゴヨウマツでは6〜9ヶ月

と、種類によっても冷蔵期間はバラバラですし、
チョウセンゴヨウ(朝鮮五葉)という寒冷地の松になると
低温だけでは不十分で、
20〜25℃の温かい温度に2ヶ月間、
さらに3ヶ月の低温を経てようやく発芽するような
やっかいな種子もあるのです。

コーヒーの発芽1002−4.JPG
 本当は根が真直ぐに伸びないといけないのですが、
 圃場の土壌がジャーカル(クチャ)で固いために
 根が曲がってしまったのです。


さらに気難しい種子として、
休眠から目覚めるための温度と、
発芽に適した温度とを区分できないものもあり、
例えばヤマザクラは2〜3ヶ月の低温の後に、
5〜10℃で発芽するという、
比較的低い温度が発芽に適しているのですが、
これより高い温度になると
再び休眠してしまうというやっかいな種子で、
「2次休眠」と呼ばれるこの現象は、
リンゴや、野球のバットや家具などの材料に利用される
ヤチダモなども同様らしいです。

コーヒーの発芽1002−5.JPG
 双葉が四葉になるあたりですが
 殻がかろうじて付いていますね。


また、発芽開始のサインとして
光も重要な要素とする種子もあり、
葉ものではレタスやシソなどが、
樹木ではシラカンバやクロマツなどが
発芽に光が必要といわれていますが、
その逆に、ナス、トマト、ダイコンなどは
光が当たると発芽しにくい種子もあるのです。

コーヒーの発芽1002−5a.JPG
 双葉の状態の苗を出してみました。
 これも本当なら根が真直ぐになっていないといけないのに
 ジャーカル土壌が粘土質であるために
 乾期が続くとカチカチに固まる性質があり
 そういう悪条件で根が曲がってしまったようです。
 この状態の幼い頃は、マイマイが軟らかい葉を食べに
 やって来ることがあって注意が必要です。


椎(シイ)類の種子「どんぐり」は、
いったん乾燥させてしまうと発芽しなくなるのですが、
母体から熟して落ちるとすぐに根を出すコナラ、クヌギなど
落葉性の種と、
やんばる特有のスダジイなど常緑性の椎(シイ)は
翌年春暖かくなって根と芽を一斉に出してくるのもあるのです。

コーヒーの発芽1002−6.JPG
 レタスのように見えますが、コーヒーの双葉の状態です。

ネムの木の種子は、同じ木から取れた種子でも
虫のついた種子はすぐ発芽して、
虫のつかない種はなかなか発芽しないという
ヘンテコな種子もありますし、
山ウルシの種子は、1ヶ月程度冷蔵庫に入れて
その後28℃の恒温器に10日間入れる、
という複雑な処置でやっと目を覚ますとか
豆科のアカシヤの種子は、容器に種子を入れて
その中に、なんと沸騰したお湯を入れて、
「お湯が自然に冷めてから種植えすると7割以上が発芽する」
という過激なものとか、
8月中旬にコーヒー山に植えたバオバブの種のように
胚の周りの肉厚でガチガチに硬い頑丈な種皮に覆われて
「硬実種子」と呼ばれている種は
「種皮が傷つかないと水を吸収せず、発芽もしない」
というやっかいな硬い種子で、
そのために先月の種植えでは
紙やすりでバオバブの種子を手が痛くなるほど削ったとか、
種子によってもいろいろなパターンがあるのですが、
ほとんどの野生植物は気温5℃〜20℃ぐらいで発芽し、
25度以上になると発芽は止まって休眠に入るという、
植物の種子が発芽するというだけをみても
なかなかDramaticなMysterious Worldなわけです。

コーヒーの発芽1002−7.JPG
双葉がしっかりと開きつつある状態です。

前置きが長くなりましたが、
それでは
「コーヒーの種子や発芽では
  どういうメカニズムになっているのかexclamation&question

というと、
ブラジルなどのコーヒー主要生産国には
おそらく専門の研究所などがあって、
実証実験などのデータも豊富にあるものと思いますが
沖縄では農業試験場でもコーヒーはテストしていませんし、
沖縄でコーヒー栽培に取組んでいる方々も
ほとんどが零細農家ですから
沖縄では残念ながらきちんとしたデータなどは
残念ながらありません。

コーヒーの発芽1002−8.JPG
 四葉がきれいに開いた状態です。

それでも、私がコーヒーの種植えを8年間行ってきた経験では、
 @「種を冷蔵庫に入れる」という方法や
   種植えの前に水に浸すなどをしなくても、
   発芽率自体は8割くらいあります。
   ただし、乾燥状態で長期間保存すると
   カビたりすることもありますが、
   それよりも発芽能力自体が落ちてくるようで、
   コーヒーの種子も“鮮度”や“旬”があるようです。
   パパイヤも同様ですし、
   今後栽培予定のカカオもそうらしいです。
   乾燥したコーヒーの種子を冷蔵庫に保管しても、
   種子の保存にはなり得ても、
   低温処理にはならないのではないかと思います。


 Aコーヒーの赤い実を収穫し、種をつぶし、
  水槽の中に入れて、沈んだ種を天日で乾燥させてから
  種植えさせていますが、
  浮かんだ種でも発芽するものもあります。
  不良豆のDNAが遺伝すると思って成育させていませんが。


 B種植えから発芽までは早くて1ヶ月、
  遅いと半年以上かかります。
  コーヒーは沖縄ではどうも春に発芽したいらしく、
  春に種植えすると発芽までは2〜3ヶ月ですが、
  秋に植えると翌春に発芽することもあるのです。
  実が赤くなっても採りそこねて、
  ひからびて落下した種子が自然生えするのも
  春から夏にかけてが多いので、
  「コーヒーの播種適期は収穫期が終わった直後
    =春から秋ごろ」
  と言えそうです。
  秋ごろに種植えをして越冬させ、
  春になって休眠打破で自然発芽させる、
  という故意に時間をかけて発芽させる「自然に近い」方法を
  収穫直後に種植えするようにしています。
  「困った時は原産地に聞け」
  という、実際には聞く手段はありませんが、
  原産地の栽培環境や気候(気温や降水量など)をimageすると
  手がかりがわかってくることもあります。


 C月のリズムを利用して
  「満月の5日前〜前日」
  に種植えを行うのが良いようです。
  新月に種植えをしたコーヒーの木は、
  どうも徒長が長いようにも思えます。


 D種植えの深さは1円玉(=2cm)程度で
  深すぎると発芽しにくいですし、
  浅いと水やりで種が表土に出てしまいます。


 E木漏れ日のある木陰で発芽させるのが良いと思います。

 Fコーヒー山をお借りした今年から始めた方法ですが、
  播種用土の表土に腐葉土を敷くと、
  発芽した後の成育が健全で早いように思えます。
  これは、より自然生えに近いからではないかと思います。


 Gコーヒーの実をつぶすと、
  落花生のように種が2つ入っていますが
  (まれに1つのもあります)
  オクラのように粘膜状のヌルヌルとした“ぬめり”があり、
  「この“ぬめり”にも“意味”がある」
  と判断して
  “ぬめり”を洗い流さないで種植えしています。
  実に落花生のように種が合わさって入っているのにも  
  何か意味があるのではないかと
  「実のまま種植えした方がいいのかなexclamation&question
  とさえ思っているのです。


というところで、
種植えから発芽については
コーヒー山の苗木移植が完了後に
再度検証してゆきたいと考えています。

コーヒーの発芽1002−9.JPG
 双葉が開き、四葉になりかけの状態ですね。

植物の生存にとって、
発芽のタイミングはとても重要な意味があり、
種子の段階では環境に対する耐性が強いのですが、
発芽して間もない芽生えはとてもデリケートで弱い存在です。

コーヒーの発芽1002−10.JPG
 四葉からもう1段進んだ状態です。

種子は、自らの遺伝情報を確実に次の世代に伝えるのが
任務ですから、発芽の確率をあげるために、
自分が育ちやすい環境になってはじめて
芽を出すようにプログラムされている、
という、種子のメカニズムの神秘性には
「たかが種子、されど種子」
という奥深さと敬意を感じ入ってしまうのです。

コーヒーの発芽1002−11.JPG
 幼い四葉の状態です。

コーヒーの発芽1002−12.JPG
 四葉の状態を上から見下ろしたところです。

ヘビの毒吸引器1.JPG
 フランス製の
 「ヘビなどの毒動物に咬まれたときの、毒吸出し器」
 です。


ヘビの毒吸引器2.JPG
 コーヒー山には見ただけでも5種類のヘビがいて、
 先週は「ハイ」というオレンジ色と黒色の縦しまに
 白い横じまがあるきれいな毒ヘビ(体長約70cm)も見ました。


ヘビの毒吸引器3.JPG
 ヘビに咬まれるのもイヤですが、
 この毒吸引器も痛そうですね。


posted by COFFEE CHERRY at 19:44| 沖縄 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | コーヒーの品質を高めるための考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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