2011年08月10日

台風9号のコーヒー山の被災状況と、その教訓

片道2時間以上の日帰りではコーヒー山の作業効率が悪いので、
昨年7月に本島南部の南風原町から国頭村に引越ししたのですが、
その2ヶ月後の8月31日に、
沖縄本島の東南東海域(太平洋側)から
沖縄本島に接近したコンパクトながら強い台風7号は
午後5時過ぎに東村から上陸し、
ヤンバルを横断して国頭村のリゾート地・オクマ(奥間)に抜け、
その後古宇利(こうり)島を経由して伊是名島方面に進行したのですが、
北部一帯では風速40m以上の暴風雨が吹き荒れ
中北部一帯では大規模な停電になり、
我が家でも54時間も停電し、
しかも電話が故障していたので電話開通は、
それから16時間も後のことでした。


深山幽谷のヤンバルは、中国大陸との分断で
ノグチゲラやヤンバルクイナ、ヤンバルテナガコガネといった
希少な動植物が生息して固有種が分化する
原始の生命が息づいているイタジイなどの照葉樹林帯で、
国頭村の総面積の、実に87%が山林原野で
自然の恵みと共生しているのですが、
逆の意味では、たいへんな“過疎地域”ということですから
台風になると、お決まりの「長期停電」が
言わば、要らないオマケみたいな“セット”になっているのです。

リュウキュウヤマガメ110808-1.JPG
 国指定の天然記念物で絶滅危惧種のリュウキュウヤマガメです。
 ヤンバルの他には久米島や渡嘉敷島にも生息しているようですが、
 なかなか出会うことはありません。
 私も昨年7月にコーヒー山で出会ってからですから1年ぶりです。
 国頭村の東西の横断道路・県道2号線が
 台風9号による土砂崩れで途中から不通になっているために
 大国林道と与那林道を迂回しないと国道58号線に出られないのですが、
 コーヒー山近くの林道上にいるリュウキュウヤマガメに出会いました。


先週の台風9号は、
昨年の台風7号と、軌跡こそ違いますが
またしても沖縄本島の東南東海域(太平洋側)から
沖縄本島に接近してきました。

3日(水曜)夕方には南大東島の南海を
ゆっくり西(沖縄本島南部)へ進み
糸満市沖を、人間が歩くような速度で
円弧を描くように迂回したため
4日(木曜)午後から6日(土曜)お昼過ぎまで
沖縄本島は実に46時間にもわたって
暴風域にさらされてしまいました。

沖縄本島が24時間以上暴風域に留まり続けたのは、
7年前の2004年(平成16年)8月の台風18号以来のことで、
また沖縄が40時間以上暴風域に巻き込まれたのは、
10年前の2001年(平成13年)9月の台風16号の時に
53時間暴風域に入ったことに次ぐ、
歴代2番目の出来事なのです。

近年、温暖化の影響なのか台風は大型化し、
襲来コースも多岐になり、
また時期も今までは7月〜10月初旬という
海水温が暖かい時期と決まっていましたが、
今年の台風1号、2号の接近が5月だったように
今後GW明けでも要注意になりそうです。

リュウキュウヤマガメ110808-2.JPG
 彼は国の天然記念物ですから、
 なでしこJAPANより格が上なので
 本来触れてはいけない動物ですが、
 彼は車が近くに来ると動かなくなる習性があり、
 車からすると“石”にしか見えないのです。
 昨年も林道で車に轢(ひ)かれた仲間の悲惨な遺体を見ました。
 そのため彼を拾い上げ、至近距離のコーヒー山のバナナロードで
 解放してあげました。


台風9号の最大瞬間風速は、
琉球新報によると、
 ・那覇市 43.1m
 ・名護市 44.8m
 ・うるま市宮城島 49.6m
 ・国頭村奥 45.8m

でしたが、
暴風域に45時間もさらされ続けていたので、
瞬間最大風速自体はそれほどでなかったにしても
その影響は大きかったのです。

また、降水量もすさまじく、
4日(木曜)午後10時から6日(土曜)の午前9時までの
35時間の降水量は、
 ・那覇市 386mm
 ・名護市 537mm
 ・本部町 671mm
 ・国頭村 508mm

と、
いずれも観測史上最高値を記録したようで、
今帰仁村の呉我山や国頭村の横断道路(2号線)など
17か所以上の土砂崩れや、
糸満市で真栄平の土地改良区では大規模な農地冠水被害も発生し、
(地下ダムの影響?)
農産物も多大な被害を被ってしまいました。

黒ポットのコーヒー苗木110808.JPG
 暴風の洗礼を浴びたスダジイなどの中高木の枝葉が
 雨あられとコーヒー苗木の黒ポットに降り注いでいました。
 数千ある黒ポットを目視点検し、苗木にかぶさっている
 枝葉を取り除くだけでも大変な根気と時間が要りますが
 苗木たちから「痛いよ、取り除いて」と訴える声が聞こえるので
 入念に見てあげないといけません。
 中には500円硬貨くらいの直径の枝木が
 かぶさっている苗木もありましたが、
 コーヒーは苗木の時期は柳のような感じで柔らかいので
 かぶさった枝葉や枝木を取り除けばOKなのです。


今回の停電もピーク時は10万世帯を超えたようで、
冷凍庫が停電になったスーパーやコンビニなどでは冷凍食品の廃棄や
車の洗車でガソリンスタンドに行列になってみたりと、
台風の後遺症は各方面に残しました。
我が家でも今回は停電の復旧まで56時間を要し
その間は冷凍庫や冷蔵庫を開けることは出来ませんでした。
電話やネットの開通はさらに遅れて8日(月曜)の夜10時のことでした。

ヤンバルでは「オール電化」は自殺行為になります。
停電で断水になり、お湯も沸かせないので
HI調理器具も不必要ですし、
高額の太陽光発電も、屋上に設置したパネルが飛ばされたり
暴風でパイプが破損するなどして、
それでなくとも電気代で投資回収するのに15年以上もかかるのですから
ヤンバルではなかなか難しいと私は思います。
我が家の屋上にも、前に住んでいた方が設置した
太陽光パネルが台風で壊れ、
そのままオブジェとして残っていますが、
これだって台風でいつ吹き飛ばされるか
いつも心配しています。
我が家の水は山の自然な水で、
塩素の入った一般の水道ではありませんから、
台風だけでなく大雨でも水は茶色くにごることがありますが
断水することもなく、しかも何といっても“タダ”なので、
水に関しては、都会に比べると恵みをふんだんに受けています。

主幹の先端が折れたコーヒー110808.JPG
 主幹の大事な先端が、倒壊してきた枝木が当たったことで
 折れてしまいました。
 こういうのは、主幹の先端近くから、また新しい主幹が出て来るのです。
 樹形は少し歪(いびつ)というか、
 真っ直ぐな1本のきれいな主幹ではなくなるので、
 再生しても強度的には弱くなってしまいます。


さて、前置きがとても長くなりましたが
コーヒー山には台風一過の8日(月曜)に行って
被災状況を確認してきました。
ひとことで言えば、
コーヒーは
「ほとんど無傷」
で、
暴風域に45時間もさらされたことで、
私も少し心配もしていたのですが、
想定外、といっては山に失礼ですが
心配は杞憂に終わりました。

もちろん、イタジイなどの中高木は
直接暴風を受けるのですから、
枝葉が吹き飛んだり、一部は倒壊するなどして
木漏れ日が入る程度の遮光の森林内も、
中高木の枝葉が飛ばされたことで
陽をさえぎることが出来ずに
森林内は見通しが良くなり、
空を見上げても、青い空や白い雲が
見えるようになってしまいました。

倒壊したコーヒー110808.JPG
 森林内でもともと朽ちていた木を切らずに見落としていると
 朽ち木は暴風で簡単に折れてしまいます。
 大事なコーヒーが、朽ち木が倒壊して直撃したことで
 下敷きになってしまいました。
 こういう場合は、放置しておくと根付いていれば
 “カットバック”という、新しい幹が根元付近から出てくるのですが
 これだと時間がかかるので、植え替えするかどうか
 もう少し様子をみたいと思います。


中高木の枝葉が茂り、
地面から天を見上げても
そよ風になびいた枝葉の間から
まぶしい空が見えるようになるまでは
最低1カ月以上かかりそうです。

コーヒーの具体的な被災としては、
 ・苗木ポットに、頭上から枝葉が振り落とされてきている
 ・苗木ポットが大雨で水抜きが悪くなっているものが
   数%程度あった
 ・移植したコーヒーの木が数本、
   暴風で倒壊した木の直撃を受けて折れてしまった
 ・尾根に移植したコーヒーの木が数本、
   暴風で斜めに倒されかけていた

といった程度の軽微なもので、
沖縄では台風は避けて通れない試練ですから
「防風対策」
は必須条件の1つですが、
「森林内の中高木の樹幹に植える栽培方法では
  中高木が暴風をさえぎり、森林はまさに天然の要塞」

といえて、
沖縄でのコーヒー栽培は、
ヤンバルでこそ活路がありそうな気がします。

恩納村の故・山城武徳先生に
「台風対策」をお聞きした時に言われた
「自然には自然で立ち向かうべきだ」
という名言を戴いたのですが、
森林栽培こそ、まさしく“沖縄流”だと思います。

イノシシ被害110808.JPG
 画像では判りにくいのですが、
 イノシシに掘られた地面を撮影したものです。
 この時期はイノシシの好物のドングリがないために
 体長30〜40cmもある巨大なヤンバルオオフトミミズを探し、
 強靭な鼻をブルドーザーのように押し進めて
 いわば地面を“開墾”してしまうのです。
 時々苗木黒ポットにまで鼻を押しこめているような跡を
 見ることがありますが、
 コーヒーにはカフェインというアルカロイド(=毒)があり、
 イノシシはこれを嫌って、直接コーヒーを狙うことはないのですが、
 ミミズを取るために、コーヒーの近くを掘ることはあるのです。
 コーヒー山では、ある意味台風よりもやっかいなのが
 イノシシなのです。


コーヒーを森林栽培するということは、
除草剤や農薬、化学肥料とは無縁の世界で
畜産堆肥も使わない自然農法をするということですが、
将来的に、コーヒー山で収穫したコーヒーだけでなく、
いろいろな果樹を食べられるような喫茶コーナーも
循環農業や自然エネルギーといったことを考えると、
中米のニカラグア北部のコーヒー農園
「セルバ・ネグラ(Selva Negra)」
を目標にすることになりそうです。

私はニカラグアに行ったことがありませんから、
本やネットでの情報しかありませんが、
「セルバ・ネグラ」
では、
国内の電気代が高いので
電気は風力発電とソーラー発電による自給でまかない、
汚水溜めで発生したメタンガスを利用したり、
オーガニックファームとして農産物の栽培や畜産を飼育して
食材も完全自給だったり、
レストランからでる生ゴミはミミズとバクテリアで分解するとか、
農園内には結婚式用チャペルやバンガローまであり、
ジャングルトレッキングも行えるそうです。

もちろん、コーヒー山では畜産飼育はしませんが、
国頭村内には畜産農家が多く、
良いものを作る理念を掲げる農家も多いので、
全部私がやらなくても提携すればいいのですから、
私はより良い品質を求めて精進すればいいわけです。
というわけで、
最初から「セルバ・ネグラ」を意識していたわけではなくて、
目指す方向性が同じなので、
最近意識するようになりました。
いつか現地を視察してみたいものです。
posted by COFFEE CHERRY at 16:29| 沖縄 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 台風の被害 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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