2011年11月17日

ミミズの偉大さを考える

・蚯蚓
・目不見
・大地の腸
・地球の虫(英語ではearthworm)
・雨の虫
・自然の鍬
・地竜(中国語)

これらは、
ミミズの別名です。

「春の暖かさを感じて、冬ごもりしていた虫が外に這い出てくる」
二十四節気で3月上旬の
「啓蟄(けいちつ)」
も、
主にミミズのことを表しているような気がします。

最近、コーヒー山や自宅に隣接するバナナ園や庭などで
ミミズがずいぶん目立つようになりました。
以前はスコップで掘った土にミミズが1〜2匹見つかる程度だったのが、
現在はその数倍はいるようで、
嬉しさのあまり思わずニヤけてしまいます。

ヤンバルオオフトミミズの団粒土111116.JPG
 コーヒー山のヤンバルオオフトミミズの団粒土。
 私の右手の握りこぶしくらいある巨大な塊です。
 穴は小指が入るほどの径がありますから、
 きっと30cm以上のヘビのような大物でしょう。
 紫色なので、ミミズに失礼ですが見た目は気持ち悪いです。



今から2300年前後も前の中国の戦国時代、
老子よりあと、荘子より前に生きたといわれる道家・列子は、
8編の書を残し、故事・寓言(ぐうげん)・神話が多く書かれているのですが、
その中の「列子(湯門編)」の
「愚公(ぐこう)山を移す」
には、以下のように書かれています。

原文は省略しますが、
昔、中国の冀(き)州(現・河北省)の南、
河陽(現・河南省)の北に、
太行(たいこう)山と王屋(おうおく)山という、
700里四方もある広大な大山があり、
そのふもとに愚公(ぐこう)という老人が住んでいました。
外出にはいつも遠回りをしなければならず、
「あの険しい山を平らにして、予州の南まで道を通し、
漢水の南まで行けるようにしたい」
と家族に相談し、愚公の妻からは反論が出たものの、
愚公は息子や孫たちとともに岩石を砕き、土を掘り返し、
もっこで渤海の隅に運び出すのです。
黄河のほとりに住む智叟(ちそう)という老人は、その愚かさを嘲笑し
「あんたの馬鹿さ加減といったら話にならない。
老い先短いあんたの力では、山の一角だってとても切り崩せないさ」
と忠告します。
愚公は、ため息をつき、
「あんたの頭の固さには、手のつけようがない。
隣の家の坊やにも遠く及ばない。
良いかね、私が死んでも子供は生き残り、
その子供は孫を生み、孫はさらに子供を生んで、
子々孫々途絶えることはない。
一方、山は増えるわけじゃない。
だとすれば、いつか平らになるときが来るだろう」
と答えるのです。
この様子を見て恐れた2つの山の神は天帝に報告しました。
天帝は、愚公の真心に感心し、力持ちの神に命令して、
2つの山をそれぞれ別の場所に移してやったので、
それ以来、周囲には小高い丘さえもなくなりました。

という内容で、
「努めて怠らなければ大事は必ず成就する」
という有名な故事ですが、
これは以下の考察を想い出させます。

岩石の粒子を砕いてしだいに小さな破片にしていき、
(土をかきまぜながら岩石の粒子に消化器官内を通過させることによって)
土をかきまぜることによって土をほぐし、ばらばらにする。
そのあと重力と浸食作用によって、
土は高いところから低いところへたやすく移動していき、
かくして地形は平坦になる。
ミミズが生息する地域の地形が低くてなだらかなことは、
大部分のところミミズによるゆっくりとではあるが
持続的な働きの証しなのである。

つまり、
「大地をかたちづくるうえではミミズの影響は方向性を持つ」
という論法です。

これは130年前の1881年(明治14年)、
日本では西郷隆盛が西南戦争で敗れて自刃した4年後ですが、
進化論を提唱したイギリスの博物学者チャールズ・ダーウィンが、
亡くなる前年の1881年、40年に及ぶ研究の集大成として
「ミミズと土」
に書かれた記述です。

ダーウィンは土壌生態学の創始者でもあり、
「ミミズが土壌や植物の成長、
   ひいては人間の生存に有益な効果をもたらす」

という、
初期の文明から引き継がれた伝統や経験からくる知恵に対し、
初めて論理的な信憑性を与えた科学者の1人でもあるのです。

ダーウィンは、ミミズが、枯れ葉をトンネルに引き込み、
代わりに糞塊を地表に残す様子を観察し、
近所の婦人にお願いしてミミズの糞を一年間、毎日集めてもらいました。
その結果、ミミズはイギリスの牧草地で18.7〜40.3t/haもの
糞塊を生み出していることを明らかにしました。

さらに、牧草地の地上にチョーク(chalk)を撒き、
30年後に同じ場所を掘り起こすという、
とても気の長い実験まで行っています。

そういった実験の結果、
晩年の著書「ミミズと土」では、
 ・岩石の粒子を砕いてしだいに小さな破片にしていき、
  土をかきまぜることによって土をほぐし、ばらばらにすること

 ・土壌を形成しかきまぜることで、
  ミミズは土壌の表層、いわゆる肥沃土を形成する

という、
2つの主張をしているのです。

現代でもミミズというと、
日本人のほとんどは無関心か気味悪く思うはずですから、
ましてや130年前の人々からすると、
おそらく誰も関心を寄せる人なんていなかった中で、
ミミズが、実は地球上の土壌の形成という
重大かつ壮大な仕事をせっせとしていることを証明しようとした
ダーウィンの功績は実に偉大なものです。

ミミズは英語で"earthworm"と表記され、
直訳では「地球の虫」ですが、
ダーウィンの
「ミミズがそれまで地球の土壌形成に果たしてきた役割の重要性」
からすると、
ミミズの英語名は大げさな表現ではないといえるでしょう。

ミミズの団粒土111116.JPG
 中央と上の方にもミミズの小さい団粒土があります。
 こういう団粒土には栄養分がいっぱいなので
 コーヒーの根元付近にもパラパラとかけてあげています。



また、
日本の小野小町、中国の楊貴妃と並び、
世界の三大美女の1人に上げられる
クレオパトラ7世(紀元前30年、39歳で没)は、
「ナイル川の豊穣な大地はミミズがもたらす」
として
「ミミズの国外持ち出し禁止」
を打ち出していたようです。

古代エジプトでは、
「農業生産はミミズ無しでは成り立たない」
ことが理解できていたことで、
ミミズは
「豊穣の神」
と崇められていたのです。

直木賞作家・赤羽 尭(たかし)さんの1990年の作品、
「復讐そして栄光(光文社)」
という小説では、
イスラムではサラーフッディーン(サラディン)をも超えるほどの
イスラムの英雄なのに、なぜか日本ではあまり知られてない、
奴隷からスルターン(権力者、皇帝)にまで上り詰めた
バイバルスが描かれています。

バイバルスは騎馬軍術に優れて、メキメキ頭角を現し、
1249年のフランスのルイ9世による第7回十字軍遠征では
軍団長代理のバイバルスが奮戦して遠征軍を撃破し
シリアを占領してルイ9世を捕虜にしてしまいます。

また、1277年には、当時「世界に敵なし」と謳われた
イル・ハン(チンギス・ハーンの孫、クビライの同母兄弟)の連勝を止め、
あのフラグと互角以上の戦いを繰り広げ、
難敵の撃退に成功して領土を守っています。
(日本では1274年の文永の役と1281年の弘安の役の2度にわたる元寇がありました)

「復讐そして栄光(光文社)」
では、
エジプトをモンゴル軍の侵攻から守った英雄バイバルスと
エジプトの大法官との間の会話が以下のように展開されています。

「ところで、ナイル河畔に住む人々が、
健康で見事な体格をしているのは、どんな理由によるものかは、
いまさら説明するまでもないだろうな」
「それはナイルとミミズによるものだよ」
「ナイルの氾濫は、多量の土壌を河畔に運んで堆積してくれる。
その土壌に無数のミミズが棲み、繁殖して土壌を豊沃にしてくれる。
彼らが健康なのは、その土壌で栽培された栄養に富む
食物を食べているからなのだ」


これは小説に書いてあることで、
史実か創作かはわかりませんが、
それより1300年も前のクレオパトラ7世の
古代エジプトでも「豊穣の神」と崇められていたのですから、
バイバルスの13世紀でも同様に
ミミズが崇められていたことは想像に難くないでしょう。

ミミズの団粒土111116-2.JPG
 コーヒー山やバナナ園、自宅庭には
 こういったミミズの団粒土があちこちにあり、
 土を少し掘り返しただけで、
 ありがたいことに何匹もミミズが出てきます。



中国で孟子が孔子の儒学を、
荘子が老子の無為自然の思想を広めている
2300年前頃の戦国時代、
古代ギリシアでは、
プラトンの弟子アリストテレスが活躍していて、
『動物誌』第6巻第1章では、
ミミズを
「大地のはらわた」
と呼んでいたそうです。


古代エジプトや古代ギリシアで
「ミミズが土壌を肥沃化させる」
ことが解かっていたのですから、
四大文明といわれる
 ・エジプト文明
 ・メソポタミア文明
 ・中国文明(黄河・長江)
 ・インダス文明

でも、
ミミズの実効性が
経験×知識=知恵
のようなことが積み重なって
伝承されていったのではないかと想像してしまいます。


こうしてみると、
目がなく、体そのものが腸のミミズは
外見は決して美しくはないのですが、
地球には無くてはならないものの1つなので、
仲良くお友達になりたいくらいですから、
私のような自然栽培派からすると、
土壌殺菌剤や農薬、殺虫剤、化学肥料などを使って
植物質を分解するミミズや微生物などを殺してしまうのは
考えられないことなのです。

ルネッサンス期のレオナルド・ダ・ヴィンチが、
「我々は足元にある土壌よりも、天体の動きについての方が分かっている」
と言ったように、
ミミズの生態は500年経った現代でも解明されていないのですが、
今日解かっているミミズの主なはたらきとしては、
まず、土壌中にトンネルを掘って土を動かしたり、
土壌の通気性、透水性を上げる効果でしょう。

ミミズは土壌表層からいろいろな有機物を地中に持ち込み、
地中深くの土壌を地表へ持ち出すという、
一輪車やベルトコンベアー的なガテン系の仕事や
土壌粒子や有機物を食べるという
破砕機やストレーナー的な要素もありますし、
排泄時には植物の有益な栄養源に変えるのですから、
「テクマクマヤコン テクマクマヤコン…」
「マハリクマハリタヤンバラヤン〜」
という魔法の呪文がかけられるような、
まさに
Earthworm
 ・地球の虫
 ・大地の腸

そのもので、偉大な虫なのです。

ミミズは枯死植物や根、動物の糞など有機物を食べて
それを体内で動物性タンパクに変えています。
そのミミズをイノシシやヤンバルクイナなどの野鳥、
ニワトリが動物性タンパク源として食べ、
その(放牧の)ニワトリを人間が食べているので、
大きな食物連鎖の中で、
ミミズはわれわれ人間とも関係しているのです。

バナナ園をヤンバルクイナが荒らすのは
ミミズが増えてきた証拠なんですね。

ミミズが出した糞は植物の貴重な栄養源にもなっています。
ミミズは炭酸カルシウムを含む分泌液を出すらしく、
ミミズの糞はふつう生息している土壌よりも中性に近いといわれています。
また、置換性カルシウム、マグネシウム、カリウム
および可給態リン酸などの無機物や微生物が多く含まれ、
その栄養たっぷりの糞を土の中や地上に排泄しているのです。
そうするとその土は、
次の植物育成に再利用可能な状態になるというわけです。

公園や庭では、美観のために落ち葉を掃いていますが、
本当は放置しておいたよいのです。
森林では樹木が吸収する無機養分の6割程度が
落枝・落葉から供給されているといわれています。

落ち葉を掃けば掃くほど、土はやせますし、
落ち葉で覆われない表土は乾燥したり
浸食を受けやすくなり、
土が踏み固められてしまうと、
充分な雨水や酸素が地中に入り込めず、
根は水や酸素が取り込むことが出来にくくなってしまい、
ミミズを始めとした土壌動物も住みにくい環境になって、
活力の乏しい土壌になってしまうのです。



 ミミズのエサを掃いたり焼いてしまうと、当然ミミズは減少します。
 ミミズのいない土は、栄養がなく水分を吸収することもできにくいので、
 雨が降ると雨水はそのまま表面を流れて行ってしまいます。
 そうなると植物も育たちにくいし、
 ミミズをエサとする動物や野鳥も棲まなくなってしまいますから
 落ち葉清掃はしないか、してもほどほどがよさそうです。
 灰を撒くために落枝・落葉を焼く、というのは
 mini焼け畑のようなものですから、
 良いかもしれませんね。



地球にやさしいエコロジーの一環で
ミミズコンポストという、ミミズによる家庭生ゴミの有機処理も
一部で使われていますが、
ほとんどが、
「“シマミミズ”が生ゴミを一番効率的にコンポストしてくれる」
と言っています。
ミミズは4億年も前から地球に存在していて、
現在判明しているだけでも体長0.44mmから3.6mのものまで
約3,000種類がいるといわれていて、
その土地に合うミミズがいるのです。

例えば、酪農で知られるNew Zealandでは
1850年からイギリス人の移民が始まり
その時に持ち込まれた羊の放牧用の草地に棲む
土着のミミズの働きが悪かったことで、
イギリスから多種のミミズを持ち込み、
ミミズを住まわせる環境や土壌についての実験観察を行い
その土地にふさわしいミミズを選択したことで、
草の生産量が著しく増加し、
酪農王国化していった、
といわれていますから
ヤンバルにもヤンバルに合うミミズはいるはずで、
私は土着するミミズで充分だと考えています。

地域ごとに、土着ミミズの種が存在する意義、
あるいは進化の過程というのがあるはずです。
ヤンバルでは特に大型系や
細長い(といっても10cm程度はあります)ミミズが多いのですが、
土壌環境や気候風土に密接なつながりがあるはずです。

ヤンバルオオフトミミズ111115.JPG
黒ポリポットの植え替え作業中に
 土から出てきたヤンバルオオフトミミズです。
 ヘビのように見えますが、巨大なミミズなのです。
 やんばるの固有種らしいです。



自然農法の創始者といわれる故・福岡正信先生の粘土団子は
すべての生き物を敵とせず、植物本来の力で栽培する農法、
すなわち、“混植”や“不耕起”を説いたものです。
あるいは、絶対不可能を覆して、
リンゴの自然栽培を成功させた木村秋則さん、
共通するキーワードは「ミミズ」でしょう。
自然の循環が森と生きものを共生させ、
豊かな森を育んでいるのです。

要するに、
「いかに自然体でミミズを増やせるか」
ということが、
土壌を肥沃化する上で重要なことだと
私は考えています。



 やなせたかし作詞、いずみたく作曲の
 『手のひらに太陽を』
 には、
 「ミミズだって、オケラだって、アメンボだって、
 みんな みんな生きているんだ 友だちなんだ」
 という歌詞がありますが、その通りですね。
 そういえば天地総子さんは最近テレビやラジオで
 見かけなくなったような気がしますが。



ツールド沖縄111113.JPG
 先週の13日(日曜)は
 「ツール・ド・おきなわ」という自転車競技レースがありました。
 そのため国頭村内の国道58号線や県道2号線、
 70号線は正午まで交通規制になりました。
 私が見た時は、すでにセミプロ級の選手たちが通過した後でした。
 沿道の大会関係者の話では、
 「1人が独走し、9分くらい離れて2位が1人、
 それからまた離れて集団が通過した。
 その後も10分以上離れている。
 今まではこんなことはなかった。」
 と言われていました。
 「ツール・ド・おきなわ」は
 UCI(国際自転車競技連合)のアジアツアークラス2にランクされる、
 国内最長の国際ロードレースで、
 海外招待選手や国際ライセンス所持の国内の強豪選手が出場する
 “チャンピオン”といわれるレースと、
 一般の方々が出場するレースと2つあるようで、
 ゼッケンの色がチャンピオンは青地、一般は黄色地でしたね。
 距離は210kmですが、起伏に富んだ山岳レースで、
 昨年は福島晋一さんという方が
 5時間30分43秒で優勝しています。
 これは平均時速38kmで、一見遅いように思えますが、
 故・足立弘志さんは生前、
 「時速100kmくらいで家の前の坂を下りていく」
 と言われていましたから、
 県道2号線の山越えが厳しいみたいですね。
 普通のスポーツ車で参加された一般の方は
 脱輪やチェーン切れなどもあるようです。
 箱根や日光のいろは坂のような急坂とは比較しにくいですが、
 東シナ海沿いの国道58号線は海抜1〜2mなのに、
 全長16kmの2号線のピークは300mくらいあり、
 カーブや起伏が多く、
 軽自動車のギアでもトップのままでは2号線を走りとおせないので、
 沖縄本島としては最も厳しい山岳道路ですから、
 ここを自転車で走るのは大変過酷なはずです。
 大会関係者の話では、
 「取材用のヘリコプターやマスコミの取材車も初期の頃はあったのに、
 最近は参加者も減少傾向で年々盛り下がっている」
 仲間のエース級の体力を温存させるためか、
 「前を走る仲間の自転車の後ろにつかまって
 ズルする選手もいる」
 と言っていましたね。
 もちろん日本人ではなく、韓国人でもないのですが。

posted by COFFEE CHERRY at 17:34| 沖縄 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | コーヒーの品質を高めるための考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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