2011年12月09日

宮崎産マンゴーからひもとく沖縄産コーヒーの方向性

沖縄でのコーヒー栽培者は、
木を1本庭に植えている方から数百本規模まで含めると、
離島も含めて私が知っているだけでも
すでに100人を超える方々がいますので、
実数はもっともっと多いはずです。

また、新規の栽培希望者も続々と登場してきていて、
大げさにいえば、
「西部開拓時代のゴールドラッシュ」
とまではいきませんが
“プチ・沖縄コーヒー栽培・ラッシュ”
の感が出てきています。

ローゼルの花111209.JPG
 自宅の庭に咲いたローゼルの花です。
 ガクを生のまま熱湯をかけると、
 鮮やかな赤いRoselle teaの出来上がりです。
 酸味が効いてクセになるくらい美味しいです。
 もちろんジャムにも出来ますよ。
 沖縄では10月中旬頃から年内一杯が旬です。



沖縄は今年は台風台風の当たり年で
・5月下旬の2号、大型で葉タバコなど戦後最大の農産物被害
・6月下旬の5号
・8月上旬の9号、本島が45時間暴風雨圏に入り夏野菜が壊滅

と、
3回の台風の襲来で
県内の農産物の被害額としては戦後最大に上りました。

沖縄産コーヒーは、昨年に引き続いて不作でした。
例年、春の降雨がコーヒーの開花を促すのですが、
昨春は曇天ばかりで、晴れ間も降雨も少なかったために
生豆に班が出たり、軟らかかったり、浮豆が多かったりと、
生産者が満足するような良い豆が生産出来なかったのです。

今年は台風の影響も含めて平年以上の降雨があり、
照葉樹林に守られた自然の要塞のコーヒー山では
おかげさまで台風の被災もほとんどなく、
コーヒーの生育は順調そのものでしたが、
他のコーヒー農園は日なた栽培ですから、
3度の台風による被災がかなりあり
・南城市の知念コーヒーは壊滅的
・南風原町の大城コーヒーでも同様で収量は激減
・東村の渡嘉敷コーヒーは今春500本のカットバックを行い
 収量がしばらくは激減

・大宜味村のハウス栽培では台風の被災で撤退化
と、
親交の深いコーヒー農園の現況は、
「良くはない」
というより、
「今年は最悪」
という方が近そうです。
これに関連し、
珈琲豆脱穀機を開発された細川製作所様から
果肉除去機の試作機のデモの日程の打診を頂きましたが
収穫直後の実が集まらないことで
「時期は後日調整」
ということに至ってしまいました。

そういう中でも、
「魔法の打ち出の小づちを持っている」
というウワサのあそことあそこは、きっと
「注文があればすべて納品できる」
態勢なのでしょう。

「沖縄産コーヒーに海外産を1粒でも混ぜたら、もう沖縄産といえない」
「海外産を混ぜるなら正直に公表するべきだ」
という私の考え方は、
このブログを継続的にご覧いただいている方々であれば
充分に理解していただけていると思いますが、
そもそも
『沖縄産』
の定義自体があいまいなことが問題なのです。

将来的には、沖縄コーヒーの生産者団体の
必要性が生じてくるものと思います。
もちろん、単なる親睦団体ではなく、
厳しい基準を設けて、
しっかり公正に管理・指導出来うる生産者団体のことです。

生産者であれば
・栽培面積
・栽培本数
・栽培品種
・農法
・収穫量
・加工方法
・生豆生産量
・保存方法
・使用した肥料の種類と施肥時期、数量

など、
消費者に沖縄産の「安全」や「安心」を認知して頂くためにも
traceabilityの導入は今後不可欠ですから、
それらは本来明らかにできて当然ですし、
また
「生豆を堂々と提示する」
ことも当然のことなのです。

こういうことが徹底出来ないのは
個々の生産者の考え方によっては
「そんな細かいことはいちいち公表する必要性がない」
「企業秘密だから言えない、見せられない」
という用管窺天(ようかんきてん)の方々もいるでしょうし、
「少しの囮(見本)で信用させて、実際の中身はほとんどが海外産」
という犯罪まがいの呆れた産地偽装生産者も実際にいるからです。

フヨウの花111130.JPG
 コーヒー山近くのフヨウ(芙蓉)の花です。
 ローゼルの花によく似ています。
 フヨウ(芙蓉)はアオイ科フヨウ属の落葉低木で
 英語名は「Hibiscus mutabilis」ですが、
 ローゼルもアオイ科フヨウ属の植物で、
 英語名は「Hibiscus sabdariffa」というように
 “Hibiscus”(フヨウ属)のグループです。




なぜ、しつこくそういうことを持ち出すのかというと、
一躍有名になった
宮崎県の完熟マンゴー「太陽のたまご」の事例を考えると
沖縄産コーヒーの将来に暗雲が立ち込めるように思えるからです。

最初の頃は、おそらく沖縄産マンゴー生産者の誰もが
「宮崎のマンゴーなんて…」
と慢心して高を括(くく)っていたのでしょうが、
後発の宮崎産マンゴーは周到な準備・分析をして
消費者のニーズに応え、
現在では沖縄産マンゴーを脅かすようになっています。

宮崎マンゴーは、
1976年(昭和51年)に南郷町の県亜熱帯作物支場で導入され、
その後農家らが部会を立ち上げて試行錯誤しながら試験栽培等を重ね、
1986年(昭和61年)に、お米の減反政策の代替作物として
西都市で本格栽培が始まりました。
もう25年の歴史があるのです。

もちろん沖縄産に比べると宮崎産の歴史は浅い。
そのために後発の宮崎マンゴーは
後発優位のマーケティング戦略を組み立てました。
・すでに沖縄産が国産の市場を創っているので、
 宣伝広告は製品価値を伝えるのではなく、
 ブランド訴求をするのみで良い

・先発(沖縄産)の失敗事例を分析・対応することで、
 技術開発について無駄な投資が抑えられる

・独自の改良をすることで別の新しさ、価値を訴えることで
 先発(沖縄産)の市場を奪い取れる

ということですよね。

要するに、先発の沖縄産は圧倒的優位の市場を占有しながら
確固たる追随を許さないポジションを築けないうちに、
後発の宮崎産に消費者に新しさ、既存にはない価値を
創られてしまったのです。
それは“基準”づくりの差です。

オクラの花111209.JPG
 自宅庭に咲いたオクラの花です。
 この花もローゼルやフヨウに似ています。
 オクラはアオイ科トロロアオイ属ですが、
 以前はフヨウ属(Hibiscus)に分類されていたようです。



1998年(平成10年)に、
JA宮崎が「太陽のタマゴ」のブランド名を制定しました。
宮崎産であれば、何でも「太陽のタマゴ」と名乗れるのではなく、
 @1玉350グラム以上
 A糖度15度以上
といった基準だけではなく、
 ・自然に落果するまで樹上で完熟させる
 ・果実裏側に日照を反射させる白紙をあて、裏側も赤くさせる
 ・果実を高い位置で栽培させる
 ・日照に当たるようにヒモで吊る
 ・すべての果実に生産者を特定する数字を記入する

など、
自然に甘いマンゴーが作れないために
技術を駆使していて、
努力の結晶が結果を出してきているのです。

果実は大きさや糖度などで5段階に分類され、
A品といわれる「太陽のタマゴ」ブランドは
全体の1割程度だそうです。
その技術代が小売価格5000円以上という
高価格になっているのも、
充分に理解できるところです。

こういった「基準づくり」の発想が
残念ながら沖縄県にはまったくありません。
「ただ沖縄でつくったマンゴー」
というだけなのです。

2008年度の年間出荷量(国産)総数は約2,843トンで、
そのシェアは
 ・1位 沖縄県 1,538トン(54%)
 ・2位 宮崎県  862トン(30%)
 ・3位 鹿児島県 307トン(11%)
 ・4位 熊本県   97トン(3%)
 ・5位 和歌山県


沖縄産マンゴーのシェアは年々減少傾向にありますが、
ランチェスターのシェア理論では
「三社以上の競争であれば、過半数を占めなくても
 市場の41.7%を占有すれば
 安定目標値として首位独走の条件となる」

といわれていますが、
現状では沖縄産マンゴーは“安泰”ではないと思われます。
なにせ
「ただ沖縄でつくったマンゴー」
なのですから。
「なんくるないさー」
とは
「“難”来るないさー」
ではないはずです。

祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹(さらそうじゅ)の花の色
盛者(じょうじゃ)必衰の理(ことわり)をあらわす
おごれる人も久しからず
ただ春の世の夢のごとし
たけき者も遂には滅びぬ
偏(ひとえ)に風の前の塵(ちり)に同じ


平家物語の冒頭、平氏が没落していく
「栄華は続かない。栄えていても落ちてゆく。」
様子が、沖縄産マンゴーのようです。

昨年引っ越しする前の南風原(はえばる)町の知人は
「今からマンゴー栽培に参入」
されると言われて、これは心配ですが、
国頭村辺土名で無農薬栽培でマンゴー栽培に挑戦されている
愛知県出身の若いご夫婦に先日お会いしました。
こちらは応援したいですね。

基準づくりをしない沖縄産マンゴーの衰退をみていると、
今後の沖縄コーヒーの方向性も見えてくるわけです。


クミスクチンの花.JPG
 クミスクチンの花。
 東村の「森のハーブガーデン」で撮影しました。
 シソ科の低木多年草生で、
 マレー語で「クミス」は“ヒゲ”を、
 「クチン」は“ネコ”を意味しているように
 和名では「ネコノヒゲ」と呼ばれています。
 腎臓炎、腎臓結石、膀胱炎など
 腎臓疾患の改善に効果がある健康茶として、
 古来から沖縄では愛飲されていますが
 様々なの改善に効能があるとされています
 やらせで打ち切りになった「発掘!あるある大事典」では
 お肌のケアとかダイエット効果を取り上げていたような
 記憶がありますが、さてどうだったでしょうか。



冒頭の“プチ・沖縄コーヒー・ラッシュ”では、
いろいろなウワサを耳にします。

何やら大きなプロジェクト化しようとする動きもあるようです。
そういう動きからすると、やがて沖縄産コーヒーにも
親睦団体が出来る可能性もありそうですが、
産地偽装するインチキ生産者や
ブローカーまがいの人が生産者のフリをしても
誰でも入れる親睦を目的とするだけの団体であるなら、
私は意味がないので入会することは有り得ません。
その場合には将来的にですが、
宮崎産マンゴーの事例からも、
しっかりした栽培指導や基準づくりをしながら
全体の底上げをしていく、
別の団体を興す必要性も出てくると思います。
賛同する生産者がどれだけいるかが問題ですが、
入り口を厳しく、最初は数軒でも集まればいいと思っています。

キクイモの花111203.JPG
 キクイモの花。
 東村の「森のハーブガーデン」駐車場の周囲に
 咲き乱れていたので撮影しました。
 キク科ヒマワリ属の多年草で黄色い花がきれいですが、
 在来種の植物を駆逐して繁殖エリアを拡大するので、
 外来生物法によって要注意外来生物に指定されているようです。



沖縄産コーヒーでの大きなプロジェクト化のウワサは、
いろいろな仕組みづくり、役割がてんこ盛りになっているらしく
クリスマスケーキのデコレーションのようで賑やかそうですが、
一番大切なことは仕組み作りよりも
「木を元気に生育させて、良質の実をつけること」
が肝心かなめの本分なはずですが、
新規参入者には共通していえることですが、
どうもコーヒー栽培を簡単に考えているようで、
収穫時期や収穫量まで、全部うまくいった仮定で
構成されているのだとすれば、
砂上の楼閣になってしまう危惧もあるかもしれません。

織田裕二が演じる青島俊作巡査部長が主人公の
『踊る大捜査線 THE MOVIE』(1998年公開の第1作)
のクライマックス場面で、
青島巡査部長がパトカーの無線で
「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだexclamation
と叫んだ名セリフを想い出してしまいました。

映画は、湾岸署と警察庁の組織の中心で
意思決定をするところの間に摩擦や矛盾が生じても、
現場が一生懸命事件を解決していくというSTORYになっていて、
意地とプライドの塊の本部のエリートたちは
会議で好き勝手に方針を決めますが、
そのエリートの中で現場をよく理解している人もいれば、
全く理解しないまま自分たちの手柄だけを考えている人たちがいて、
現場を理解している人の代表が柳葉敏郎でしたね。

沖縄でのコーヒー栽培は、まだ確立されていません。
私は時間がかかっても次の世代に良い形で受け継いでほしいので、
品種探しや栽培方法など、もっともっと研究しないといけない責務があり
地道に自分の道を進む決心を改めて固めた次第です。


「中庸」第二段第一節には、こう書かれています。

仲尼曰:
“君子中庸,小人反中庸。
君子之中庸也,君子而時中;
小人之中庸也,小人而無忌憚也。”


仲尼(ちゅうじ)曰く、
君子は中庸なり。小人は中庸に反す。
君子の中庸や、君子にして時に中る。
小人の中庸や、小人にして忌憚(きたん)する無きなり、と。


孔子曰く
「君子は中庸すなわち偏らず過不足なく、
平常にして徳を身に体得しているが、小人は中庸に反している。
君子が中庸をよくするゆえんは、未だ発せずの中を失わず、
独りを慎むの工夫を凝らして和を得ることにある。
小人が中庸に反するゆえんは、
欲をほしいままにして少しも忌(い)み憚(はばか)り
遠慮することがないからなのである」



少し勉強して、課題がほんの少し判ってくると、
新たな疑問が次から次へと湧き出してきます。
「きっと、こういうことなんじゃないかな」
と、仮説をつくるにも容易ではありません。
わからないことだらけです。
まだまだ精進しなければいけません。

ヒビスクス・アセトセラ111203.JPG
 アオイ科フヨウ属ヒビスクス属のヒビスクス・アセトセラです。
 これも東村の「森のハーブガーデン」で撮影しました。
 赤シソのように葉が赤銅色なのでシソアオイともいうようです。
 ローゼルの仲間のようで「実だけでなく葉や茎も使う」と
 比嘉さんからお聞きしましたが、お茶にすると
 ハイビスカス・ローゼルと比較して美味しいとはいえませんでした。
 色はまあまあ出るのですが。
 横浜市の中村さんには、こっちを「ハイビスカス・ローゼル」と
 誤って伝えてしまいました、ごめんなさい。

posted by COFFEE CHERRY at 16:09| 沖縄 ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | コーヒーの品質を高めるための考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰しております。
組合など生産者団体は品質の安定化のため必要だと思います。
しかしどんな団体でも、排他的であったり相互に足を引っ張るような事が
あってはならないと思います。
より良い生産環境を作る為こちらの方も頑張って下さい。

さて、半人工環境で進めてきた私の植物部屋のコーヒーの木、今年は
計画停電や節電のため未熟豆や割れ果実が多く発生しました。
開花時期の同期調整も行っていましたが蕾となる突起が退化しその脇
から葉がでて来てしまいました。
これで私の植物部屋は、今年だけでなく来年もNGが確実となりました。

Posted by まめこがし at 2011年12月10日 11:40
まめこがしさん、コメントをありがとうございました。
たいへんな栽培研究をされているようですね。
徳之島でコーヒー栽培をされている吉玉さんは、借地の栽培地を所有者から返還するように求められて、その都度栽培地を変えていますが、昨年で3度目のようです。
ふつうの人なら3度も変えたら気力が抜けてしまうでしょう。
まめこがしさんもどうか平常心でご研究を進めて下さい。
成功をご祈念しています。
沖縄のコーヒー団体については、いずれ出来るでしょうが、私は敵対や対立していく気はまったくありません。
私は大本営発表をせず、真摯に正直に栽培される方々がもし居るならグループ化していきたいだけで、むしろ静かに活動していきたいと思っています。
嫌われたり邪魔されることがあるとすれば、それはおそらく私の方だと思います。
ご心配いただきありがとうございます。
Posted by 岡田 康子 at 2011年12月10日 17:12
gucciカフェ
Posted by クリスチャンルブタン 日本 at 2013年07月17日 07:13
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