2014年01月25日

マルハニチロ系のマラチオン混入事件は「木を見て森を見ず」〜3-2

今日も長いダラダラ話なので、
見たくない人は早く退散して下さい。

マルハニチロホールディングスの子会社
「アクリフーズ」群馬工場で製造した冷凍食品から
農薬「マラチオン」が検出された中毒事件は、
群馬県警が、ついに関与したと思われる工場契約社員を特定し、
偽計業務妨害容疑で逮捕する方針を固めたようです。

同社の発表によると、1月20日の時点で、
同社群馬工場生産品対象商品数(想定)640万パックに対し、
回収数は、消費者からの返品が39万9247パックと
同社倉庫に返品済みの流通在庫509万7048パックで、
合計549万6295パック、つまり回収率は「85.9%」に上っています。
(消費者からの問い合わせは、累計95万4713件)

厚生労働省の1月21日の発表によると、
アクリフーズ群馬工場の冷凍食品による
健康被害が疑われる症状の発生件数は、
全国の自治体より公表された資料を取りまとめた累計件数は
「全国で2799件」
だそうですが、
返品回収率が高まったことで、
今後の被害の拡大は、それほど心配しなくても良さそうですね。

アクリフーズは、
「卑劣な犯人が意図的に農薬を混入した」
と、
いわば被害者といわんばかりの態度をとっているように見受けられますが、
同社は消費者からの最初の苦情を把握してから
商品回収の公表まで1か月半も要して
それが被害を拡大させてしまったことは見過ごせません。

被害を過少申告し、商品回収を避けようとする姿勢は
カネボウ化粧品(東京)の美白化粧品による白斑(はくはん)被害問題と同類で、
消費者第一といいながら、実際は利益第一主義だったのですから。

アクリフーズの企業理念は、
「アクリフーズが社会に存在する価値は何か。
 社会的使命、存在意義を定義しました。
 アクリフーズは、「食べる」場面で、
 お客様に美味しい、楽しい、嬉しい、すごいの感動を味わって頂くために、
 冷凍食品の限りない可能性を追求し、
 皆さまの明るく味わい豊かで、安全な食生活に貢献しています」

と冒頭にあり、
その後、
 ・食の感動をひろげる
 ・食の可能性をひろげる
 ・食の安心、安全をひろげる

が書かれています。

最後の「食の安心、安全をひろげる」では以下のように書かれています。
 何よりも身体に良いもの、安心で安全なものを提供することが、
 私たちアクリフーズの最も大切な社会的使命です。
 素材から生産、そしてお客様の口にお運びいただくまで、
 「アクリフーズなら大丈夫」と信頼される揺るぎない食品ブランドになるよう、
 努める所存です。


この立派な理念の通りなら、最初の苦情があった時に、
すぐに調査をして回収を指示していたはずです。

アクリフーズのHPによると
4年前の平成21年にISO22000の認証を取得しています。
ISO22000はISOの食品安全マネジメントシステムの規格で
この規格には
 ・緊急事態対応
 ・トレーサビリティシステム
 ・回収
 ・HACCP

等のシステムを包含していますが、
ISOではハインリッヒの法則を全社員に周知徹底教育されますから
(1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、
 その背景には300の異常が存在する)
それが最も認識していなければならないはずの
経営幹部が欠如していたことになるのです。

もう7年前になりますが、
 ・2007年1月 不二家が消費期限切れの原料を使っていた(JAS法違反)
 ・2007年6月 ミートホープが牛ひき肉の偽装表示(JAS法違反)
 ・2007年8月 石屋製菓が「白い恋人」などの賞味期限を改ざん(JAS法違反)
 ・2007年10月 赤福が消費期限の改ざん(JAS法違反)
 ・2007年10月 比内鶏の産地偽装(JAS法違反)
 ・2007年11月 船場吉兆の原産地表示違反、消費期限改ざん(不正競争防止法違反)

があり、
不二家や赤福はISO認証の立派な老舗で、永く
「消費者に愛されてきた銘菓」
を作り続けてきた企業であるにもかかわらず、
経営幹部の意識改革がなければ、
羊頭狗肉(ようとうくにく)、看板に偽りありと、
かえって不信を買うことになるのです。

立派な会社の社長室には、
仰々しく企業理念や社訓などが額縁に入れられて掲げられていますが、
いくらそれを暗唱したところで、それを遵守出来ないなら、
それは過去の遺物、化石に他なりません。
草葉の陰で創業者は泣いていることでしょう。

昨年、大阪の新阪急ホテルから始まった食品偽装でも
ホテル
 ・大阪新阪急ホテル
 ・ザ・リッツ・カールトン大阪
 ・シェラトン 都ホテル大阪
 ・天王寺都ホテル
 ・大阪国際交流センターホテル
 ・宝塚ホテル
 ・ウェスティン 都ホテル京都
 ・名鉄グランドホテル
 ・帝国ホテル
 ・ホテルオークラ
 ・椿山荘
 ・ハイアットリージェンシー東京
 ・都ホテル ニューアルカイック
 ・沖縄都ホテル
 ・奈良万葉若草の宿三笠
 ・大和屋本店旅館
 ・山のホテル
 ・箱根ハイランドホテル
 ・宮崎フェニックスリゾート シーガイア
 …


百貨店
 ・高島屋
 ・三越伊勢丹
 ・大丸松坂屋
 ・小田急百貨店
 ・そごう西武
 ・東武百貨店
 ・東急百貨店
 ・松屋
 ・丸井
 ・京王百貨店
 ・銀座三越
 …


日本を代表するホテルや百貨店、レストランなどが、
次々と偽装表示を公表しました。
(懲りない不二家は2007年の不祥事に続き、レストラン63店で、
 小さい牛肉を接着したステーキを「成形肉」と表示せずに提供しています)

一流の「お・も・て・な・し」をしているはずの立派なホテルや百貨店、大企業や
老舗、ISO認証企業などが食品偽装するようでは、
消費者は何を信じていいのか判らない、情けない時代になり下がり、
同時に、企業CMに惑わされることなく、
消費者がますます賢くなければいけない時代に入った、といえそうです。

白い恋人や赤福の2007年の食品偽装の、
さらに7年前の2000年(平成12年)3月、
雪印乳業大樹工場(北海道)で停電事故が起き、
脱脂粉乳の原料が高温のまま放置されたことで
黄色ブドウ球菌の毒素が大量発生。
この原料を再溶解した低脂肪乳などを同社大阪工場が原料として
乳児用粉ミルク「メガミルク」を製造、出荷し、
6月には最初の食中毒患者の届け出が保健所にありましたが、
雪印乳業(株)は事件直後の対応に手間取り、
商品の回収や消費者への告知に時間を要したため、
被害は13,420人に及んでしまいました。

その波紋が治まらない、2年後の2002年(平成14年)1月、
雪印乳業の子会社・雪印食品の牛肉偽装による交付金不正受給が発覚し、
親会社の雪印乳業は廃業・解散に至ったのですが、
そのグループ子会社として分社化していたのが雪印冷凍食品で、
「雪印の名前が社名にあると再建の足手まとい」
とばかりに、
2002年10月に「株式会社アクリフーズ」に社名を変更し、
2003年にニチロ(現マルハニチロ)に買収されて
アクリフーズは現在に至っているのです。
私は当初agricultureから「アグリフーズ」と社名を名付けたと思っていたのですが、
「アクリフーズ」なんですね。

社名はコロコロ変わっても、悪しき伝統はしっかり受け継いでいたことが
今回の被害を拡大させた主因といわれてもしょうがないのです。

同社は茨城県邑楽(おうら)郡大泉町、
地図で見ると埼玉県行田市の北、群馬県足利市の南、
栃木県佐野市の南西(佐野市というと西さんのご自宅があるところですね)に位置して、
太平洋戦争前、陸軍の九七式戦闘機や四式戦闘機「疾風」、一式戦闘機「隼」など
終戦までに計2万9925機の航空機を生産した中島飛行機があった軍事産業の拠点地で、
(三菱が設計した零戦の全体の約2/3も中島飛行機が生産)
それが戦後、三洋電機や富士重工業の工場になったようです。

大泉町にはアクリフーズの他に、
富士重工業大泉工場や味の素冷凍食品関東工場、
三洋電機東京製作所、凸版印刷群馬工場など大手の工場があり、
ブラジルやペリー出身の日系人も多く、
町の全人口の約15%近くが日系人が占めているようです。

三洋電機では最盛期は1万人以上の従業員を抱え、
年間数億円の法人税を納入していたようですが、
三洋の業績不振とともに工場の雇用環境も悪化し、
三洋は2009年(平成21年)パナソニックに買収されて以降、
昨年2013年5月には旧三洋の人員9割を削減するリストラ計画が発表されました。

企業城下町は、その企業が発展している時は好景気に沸きますが、
衰退期はOK牧場の決闘シーンの砂ぼこりが舞うような、
平家物語の冒頭部分、
 祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
 娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらは(わ)す。
 おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。
 たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。

を感じてしまいます。
企業城下町は全国にありますが、
千葉県浦安市のオリエンタルランドのように
勢いがある企業があればいいですけどね。

アクリフーズの現在の従業員は294人、
その雇用形態は約8割がパートと嘱託(半年更新の期間工)で、
同社は中国山東省にも生産拠点があり、
そこから派遣された中国人研修生も含め外国人は11人だそうです。

朝5時〜23時の交代制、月給基本給14万2000円、
大手の工場の作業風景は、チャップリンの映画で、
機械に操られ人間の尊厳が失われるという「モダン・タイムス」を
私は連想してしまいます。
チャップリンが機械工になり、ネジを締める単調な作業ばかりすることで、
休憩中もその癖が治らず、上司の鼻や社長秘書のスカートのボタンを締めようとしたり、
道行く女性の服のボタンを締めようとしたりして病院に送られ、
工場はクビになる、という場面を。

アクリフーズ群馬工場では、現在生産ラインはストップ、
従業員は返品回収された商品の検査業務をしているようです。

経営幹部は保身を考え、しわ寄せは従業員に回る、という
いつもながらの構図ですね。
アクリフーズの夕張工場の製品からは異物の混入は見つかっていないのですが、
同社製冷凍食品の販売不振に伴い、
夕張工場でも減産と従業員の自宅待機も始まっているようです。

ところで、PB(プライベートブランド)商品というと、
ナショナルブランドとほぼ同品質の製品を、
より安価に仕入れることが出来て利益率が高まるために、
大手のスーパーやコンビニ、家電やホームセンター、ディスカウントストアなど
あらゆる分野で見かけるようになりましたが、
例えばセブンイレブンのPB商品「セブンプレミアム」は
必ず製造業社名入りになっています。
「誰が作ったか分からないのではお客様の信頼は得づらい」
という考え方なんですね。

「そんなの当たり前でしょう」
と思われるでしょうけど、
「安全・安心」を売りにしているイオンや西友などのPB商品の裏には
製造会社名が記されていないのです。

今回のアクリフーズ冷凍商品の回収に際しても、消費者の多くは、
PB商品も返品回収対象だとしたら、
製造会社名が記されていないと判りようがないですよね。
PB商品の製造会社の明記義務付けも
法の改正をすべきだと思います。

昨年の食品偽装では、
クマエビを「車海老」、バナメイエビを「芝海老」、
インドエビを「大正海老」と表記していたことも
消費者を欺いたのだから立派な詐欺だと思いますが、
まだメスを入れていない食材があるのです。
それは「お米」です。

魚沼産コシヒカリが、魚沼地区の生産量の数十倍が
全国に出回っているのは有名な話ですよね。

ブレンド米には内訳表示が法的に義務化されていないことで、
ブレンドした米の産地や生産年もきちんと表示しなくていいというのですから、
本来食用には向かない加工米や超古米などをブレンドしても
合法的に「国産米」として出荷出来てしまうのです。

日本人の主食のお米偽装は、根が深く歴史も長く、
いわばパンドラの箱なのです。

こうしたなか、存在感の薄い消費者庁は、来月から半年ほどの間、
食品表示の監視を担当する農林水産省の食品表示Gメンと、
お米の産地表示を監視する米穀流通監視官の合わせた約200人に、
消費者庁の職員を兼務させて、
外食のメニューについても監視させることにしたようです。

食品表示Gメンたちが、
「違反の疑いがあるケースを見つけた場合は、
 消費者庁が立ち入り検査をするなど必要な調査を行った上で、
 再発防止を命令するなどの措置を取る」
というのですが、
結果は期待薄でしょう。
こういうことは昨年の食品偽装前にやっておくべきことだからです。

沖縄のコーヒー栽培でも、
「実物見本を見せて注文を取り、実際に消費者に渡すのはニセモノ」
という古典的な詐欺の手口をするところがあり、
純粋に沖縄産を目指す生産者からすると大迷惑なところがまだあるのです。
くわばらくわばら。
posted by COFFEE CHERRY at 17:41| 沖縄 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | コーヒーの品質を高めるための考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お久しぶりです。 そろそろ次号掲載時期でしょうか。
それにしても、なんともコメントし難いお題ですね。
特にISOに関しては。 いろいろ迷いましたが一言。
私も一応微生物学など食品衛生に関し多少学び、食品Gメンの任用資格がありますが
食品工業にたずさわった事が有りません。 なので多少誤認も有るかと思います。

ISOの要求事項は、食品安全そのものを求めている訳では無く、マネージメントの構造
(仕組み)を問うているはず。
さらに言うなら、ISO 9000,14000などと共に欧州連合により構築された非関税障壁の
一群ととらえる事が出来る。
まじめで勤勉な日本の企業(今はそれほどでもないかな)と欧米企業とではISOの取り
組みに相当差異が有る様だ。

もうひとつ、ISO認証機関の商業主義にも注目する必要が有る。
制度上審査員は個人事業主(一人親方)と同じだがその資質も。
一連のISOは、上手に活用されるべきだが、為に行われている、即ちISO認証取得・
維持の活動そのものが目的となっていないか。
認証機関の姿勢もそれを推し進めていないか、そろそろそれらの検証が進み結論が
出て良い頃だと思う。

これら規格はValueを求めていない、欧州型経営の仕組みを世界に求めている、もっ
と上手に活用し日本のValue up型と調和させた運用をするべきだ。
規格書の拾い読みだけでなくノート(審議記録)も読む必要が有る。(入手は容易)
これは国内法や国内規格でも同じ事だがこちらは入手が課題。

ここまで記すと私も危険思想の持ち主と世間から言われる事になりますかな。
Posted by まめこがし at 2014年03月02日 06:36
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