2007年11月27日

近代農業の功罪@

最近の原油高によるガソリンや灯油値上げと共に、
近年では食料品の値上げも進んでいます。

日本人の食卓に欠かせない豆腐や納豆、味噌、
醤油などの原料である大豆の高騰や
パンや麺類の原料の小麦の高騰など、
庶民の生活に影響が出始めています。

世界の主要農産物の高騰の背景として、
温暖化による気象の変化が
生産地の収穫量に影響を及ぼしているとか、
バイオ燃料ブームによる転作から
穀物供給不足になっていることが挙げられています。

世界のバイオ燃料生産量の9割が
トウモロコシやサトウキビを原料とする
バイオエタノールですが、
 「バイオエタノールを1.1リッター作るために、
  原油を1リッター使う」

というバカげた話は、
当コーヒーブログかバナナブログで、
いずれ書きたいと思いますが、
主要農産物の高騰の要因の1つに挙げられている
「オーストラリアの干ばつ」
から、
メソポタミア文明の農業を思い起しました。


メソポタミアとは、古代のギリシャ語で
「2つの大河にはさまれた土地」
という意味で、
現在のイラクにあたるチグリス川と
ユーフラテス川の間の地域で
今から5,500年も前の
紀元前3,500〜3,000年ごろに起こった文明で、
エジプト文明と共に古代オリエント文明といわれ、
ヨーロッパ文明のもとになった、
というのは学校で習いましたが、
後にアラビアン・ナイトの舞台となったこの地域には、
物語に登場する不思議な魔法に代表される
高度な科学があったことでも知られています。

当時の日本は縄文時代後期(=中石器時代)で、
貝塚や敷石住居の頃ですから、
物々交換が始まったあたりで、
農業ではオオムギ、ヒエ、キビ、アワ、
ソバなどの雑穀類の栽培や
アズキ、大豆などの混作に加えて
熱帯ジャポニカの焼畑稲作も行われていたようですが、
同時期のメソポタミアでは、
すでにシュメール人が創り出した楔形(くさびがた)文字が
使われていました。

メソポタミアのペルシア湾に注ぐ河口付近では、
沼地や湿地は一面の葦におおわれていたようですが、
それ以外のところは荒涼とした原野で、
またほとんど雨が降らないので、
乾燥した大地に多くの人が住むために、
「灌漑(かんがい)用の運河やため池を作る」
という画期的な農業を始めたのも、
メソポタミア文明の特長の1つでもあるのですが、
人口の増加に伴なう灌漑(かんがい)農業の発展が、
いみじくも国家滅亡への第1歩となったようなのです。

河川から水を引く灌漑(かんがい)によって、
一時的に農産物生産は増大したのですが、
周辺の地下水が上昇し、
その地下水が40度を超す夏の高温によって蒸発し、
地下水に含まれていた大量の塩分が地表に残り、
やがて農地は耕作不能なほどに
荒廃してしまったようなのです。

メソポタミアでは、
紀元前3,500年頃まではほぼ同量の小麦と大麦が
生産されていたようですが、
灌漑(かんがい)農業の発展に伴ない、
塩分に弱い小麦の生産は減少し続け、
紀元前1,700年頃になると、
南部地方では、ついに小麦の生産を
放棄せざるをえなくなっているのです。

さらに穀物全体でも、紀元前2,400年を基準とすると、
700年後の紀元前1,700年には、
収穫量が65%も低下しているのです。

そのために、余剰農産物を生産することが出来ず、
後からその地を征服した王朝も、
支配する軍隊や官僚を駐留させることが出来ず、
メソポタミアの中心は北部へと移ってゆき、
同時に農産物の収量が落ちている南部地方からは人が去り、
やがて中東の辺境の地となり、
それ以後、南部メソポタミアが
世界から脚光を浴びるのは19世紀になるわけです。


古代文明が栄華を極めながら、
現代においてはその面影すら感じられないメソポタミアや
インド・パキスタンのインダス文明では、
共通した教訓があります。

それは、
「短期的な収穫量増大を目的とした
    人工的農業の発生とその崩壊」

です。

すなわち、メソポタミアや
インダス文明の識者が発案した人工的農業は、
画期的ではあるのですが、
「その土地の気候や環境に順応した
 長期にわたって持続可能な農業は
 実践できなかった」

ことを意味しているのです。

世界史では、
古代から中世にかけて永い繁栄を続けることが出来た国では、
その多くが農業大国で、その代表がローマ帝国です。

当時のローマに住む人々の多くは菜食主義でした。

16世紀にエスパニア(スペイン)の
フランシスコ・ピサロによって
滅亡させられたインカ帝国もまた、
南米最大の農業大国でしたが、
これらの国家が永い間大国として君臨できたのは、
環境に順応した持続可能な農業技術が
確立できたからなのです。

強い軍隊や有能な指揮官、優れた国家の指導者や
繁栄した国家の民衆が毎日食べる農産物は、
スローフード(地産地消)であったに違いないからです。

だとすれば、農業の発展は、
安定した国家を形成する上で
欠かすことが出来ない要素であって、
カロリーベースの自給率が39%にまで落ち込んでいる
日本の現象は「異常な事態」ということが
お判り戴けることと思うのです。

posted by COFFEE CHERRY at 22:28| 沖縄 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | コーヒーの品質を高めるための考え方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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